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生活と映画 cut.8 / 二足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2023 10~6位編

生活と映画
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「生活と映画」はURBAN RESEARCHのメディアサイトでかつて僕が連載していた映画コラムです。サイト終了にともない許可をいただいてバックナンバーを自分のサイトに移行しました。新年明けてすでに2月ということで「二足おそい!」に無事アップデートしました。いや~おそいですね~。こうして1年を振り返ってみると映画はほんとに不思議なもので、鑑賞直後に多幸感と高揚感に包まれつつ「5億点!」と叫んだ作品が今となってはあらすじすら覚えていなかったり、「う~ん85点ぐらいかな?」と思った1本が観たその日の感情と温度のままじんわり心の中に残っていたりします。ですので本ラキングでは主に後者が中心になるかと思います。

2024年も一ヶ月を終え2月となりましたが、最後方強襲タイプのRAM RIDER映画ランキング2023、よろしくお願いします。まずは10位から6位までです。みなさんとの答え合わせにぜひ。一昨年のランキング10~6位はこちら。そして一昨年ベスト5はこちら。

第10位「ゴジラ-1.0」

https://filmarks.com/movies/106496

あらすじ

戦後、無になった日本へ追い打ちをかけるように現れたゴジラがこの国を 負 に叩き落す。史上最も絶望的な状況での襲来に、誰が?そしてどうやって?日本は立ち向かうのか―。

アメリカを中心に海外でも誇張なしの大ヒット、邦画として初めて米アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートと公開から3ヶ月を経過した今も話題の日本のフランチャイズのフラッグシップ。ドラマパートや米軍不在の違和感については思うこともあるけど、そもそもが子供も大人も楽しめる娯楽作、ということで消化できたし、何より銀座の大見得、ゴジラ登場シーンで自分の中で帳消しになってしまった。「シン・ゴジラ」が自由で新しい時代のゴジラなら、こちらは旧来の制約を受けつつ伝統を守ってつくられたゴジラって感じがする。やっぱり次やるなら「ビオランテ」かな?

「マッドマックス」「ミスト」などすでにカラーで公開した作品のモノクロ上映ってやる意義があまりわからなかったのだけど、今公開してる本作モノクロ版はちょっと観てみたい。

第9位「ペイン・ハスラーズ」

https://filmarks.com/movies/107746

あらすじ
仕事を失った労働者階級の女性。娘を育てることもままならない彼女は、落ち目の製薬系スタートアップ企業に就職するが、危険な不正取引計画に巻き込まれていくことになる…。

僕の脳内には「ウルフ・オブ・ウォールストリート系」というカテゴリがあり、それにあてはまる時点ですでに映画としてはハズレなし、あとはその後の展開や結末によっては大当たりになるかも、ぐらい好きなジャンルになっている。具体的にいうとある種の才覚を持ちながら恵まれない、あるいは単純に貧困にある主人公が合法非合法問わず手近なビジネスを始めることでのし上がり、狂乱を迎えるタイプの映画。当然そこには仲間との友情や裏切り、転落などが待ち構えているわけだけど、本作はそれの製薬会社版、そして珍しい主人公が女性版の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。シングルマザーが主人公なせいか大儲け!狂乱!の先に待つのが転落というよりも苦悩や呵責に近く、一人の人間として悩みながら仕事し続けてる感じがよかった。

Netflixオリジナルということでそこまで話題になっていなかったけど面白かったです。

第8位「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」

https://filmarks.com/movies/91341

あらすじ
ピーター・パーカー亡きあと、スパイダーマンを継承した⾼校⽣マイルス。共に戦ったグウェンと再会した彼は、様々なバースから選び抜かれたスパイダーマンたちが集う、マルチバースの中⼼へと辿り着く。そこでマイルスが⽬にした未来。それは、愛する⼈と世界を同時には救えないという、かつてのスパイダーマンたちが受け⼊れてきた<哀しき定め>だった。それでも両⽅を守り抜くと固く誓ったマイルスだが、その⼤きな決断が、やがてマルチバース全体を揺るがす最⼤の危機を引き起こす…。

気が遠くなるような新しいアニメ表現の洪水に圧倒されつつ、どこか日本のアニメで育った自分たちをくすぐられるような嬉しさもありつつ、何よりティーンズ映画としての完成度が高くて、最近のMCU作品では一番良かった。スパイダーマンシリーズはその他のMCU作品に比べて独立した映画としての輝きが年々増してると感じます。

前後編(?)にするとしても切るところが中途半端で、10分くらい手前で終わらせて終盤は続編に回しても良かった気がする。作品にしっかり埋め込まれたみんなの静かな感情が次で爆発しそうで、次回作でさらに評価爆上がりになる予感。次回作遅れてるみたいだけど公開決まったら本作も合わせて観なおしたい。

第7位「フェイブルマンズ」

https://filmarks.com/movies/105426

あらすじ
初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年は、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく――。

「ニュー・シネマ・パラダイス」から「バビロン」まで、映画の素晴らしさを描く作品は数あれど、ここまで「撮る側」のみにフォーカスした作品はあまり観たことがない。数々の作品に受け継がれてきた「劇場で映画を観る人々」的な感動シーンに冷や水ぶっかけるような「映画の神様による自伝映画」。人を傷つけ、自分を幸せから遠ざけながらもそれでも撮ることを辞めれない、それでしか癒されない主人公が傷ましくも愛おしくなる一本。その様子はまるでコミックビーム連載終盤の桜玉吉を観ているようでした。

映画の歴史に対するリスペクトとか映画愛みたいな要素はほんとに冒頭の数分で、あくまで私的な出来事を描いてるところが監督らしいし、にも関わらず常に「映画」がまとわりついてることに畏敬の念を覚える。プロムで自作の映画を上映したあとのロッカーのシーンが本当に印象深い。スティーヴン・スピルバーグにとって映画は生きるに等しい行為であって、もはや愛を捧げたり感謝したりする対象ではないんだろうなと思った。

第6位「グランツーリスモ」

https://filmarks.com/movies/109669

あらすじ
世界中から集められた「グランツーリスモ」のトッププレイヤーたちを、本物の国際カーレースに出場するプロレーサーとして育成するため、競い合わせて選抜するプログラム「GTアカデミー」。不可能な夢へ向かって、それぞれの希望や友情、そして葛藤と挫折が交錯する中で、いよいよ運命のデビュー戦の日を迎える───。

ゲーム版「フォードvsフェラーリ」かと思いきや「トップガン:マーヴェリック」に「クリード」まで混ぜたような”全部乗せ”の激熱スポ根映画だった。主人公とほかの選手たちの友情はもちろん、指導者との軋轢や隠された苦い過去、経営目線からのジレンマなどこれだけの要素をよく一本の映画にまとめてくれたな~という感じ。

実際のGTのゲーム映像を使ったりインターフェイスをゲームに寄せた演出を随所に盛り込んでいるにも関わらず、実際のレースシーンが非常にリアルで監督の手腕を感じた。

音楽の使い方もよくて、後半のある「残り」を自力で完走するシーン、夕日も相まってめちゃくちゃ泣けた。自分自身グランツーリスモの第一世代だしGTとaudiのショーに出演したこともあり、いろいろ思い出が蘇ってしまった。山内社長にあえたのも良い思い出です。個人的には社長が昔からずっとこだわっている「カーライフシミュレーター」というワードをどっかで一回使ってほしかった。本作もその名を冠するに値する名作でした。

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以上「 二足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2023 10~6位編」でした。ベスト5はまた明日!