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等身大に憧れて/フィギュアを撮る。

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何を今さら、と思われるかもしれないけど僕はフィギュアがだいぶ好きだ。1/12スケールの国産ヒーロー物のアクションフィギュアから、ハリウッド作品を中心とした1/6サイズのホットトイズ系製品、さらに大きいスタチューなど、気になったら2週間ぐらい悩んで、悩んで、そんで大体は買ってしまう。悩んだ時点でもう買うことは決まっているんだと思う。基本的に収集癖やコレクター気質のない自分が唯一買い集めている趣味みたいなもの。

このシュワちゃんにはAGリスナーとの思い出がいっぱいで一番のお気に入り。



かわいらしくアレンジしてあったり極端にディフォルメされたキャラクターよりも、モデルをできるだけ忠実に再現した精巧な製品、作品が特に好みだ。スケール感を喪失したフィギュアは箱庭のような錯覚を味あわせてくれるし、部屋の片隅で映画のワンシーンがずっと流れ続けてるような趣がある。ちなみに自宅には1つも置いてなくて全部仕事場に並べている。

どう表現すればいいのかわからず「浦安感」と書いた。われながらいい表現。


“スケール感の喪失”と偉そうに書いてはみたけど、要するに「小さいということを一瞬忘れてしまう感覚が楽しい」程度のことで、それがより楽しめるのがフィギュアを写真に収めたときだ。新しい製品が届いたらまず開封して付属品をチェックし、様々なポーズをとらせながら写真を撮る。トラックボールやシンセ、スマホなどの”日常”が写り込まないように上手によけながら立たせるとそこにリアルな映画スターが浮かび上がる。そんな感じ。

フィギュアに「リアルさ」を求めると大抵は高額な海外製品に辿り着く。ハリウッド俳優のライセンスを取得したリアルなヘッド、素体といわれるプラスチックやシリコンのボディに精巧な服、映画に登場した小道具。ポーズをとるための関節部分が服によって隠れているため、商品写真によっては映画のワンシーンと見極めがつかないものもある。


一方で僕がこれまで見過ごしていたジャンルに「ソフビ」がある。PVC(ポリ塩化ビニール)を金型に流し込んでつくられた柔らかくて、安全で、安価な子供向けのお人形、というイメージ。子供の頃、大森のダイシン百貨店で買ってもらった科学戦隊ダイナマンや宇宙刑事シャイダー、メカゴジラ、それらが僕にとってのソフビだった。そんな精巧さとは少し距離があると思っていたソフビだけど、先日のワンフェスで根強い人気のあるジャンルだということを知って、いろいろと興味が出てきた。そういえばササダンゴさんも藁人形のソフビ(!)を買ってた。アレかわいかったな。


ソフビは前述のアクション系に比べると比較的安価なためか、大きいサイズのモデルも多く、UFOキャッチャーや一番くじなどのプライズにも多く採用されている。そういった正確な価格のついていない物の中には高価な製品と並ぶようなクオリティのフィギュアもたくさんあるのだ。そういうのをオークションサイトなどで見かけるとついつい買ってしまうようになった。主に特撮、というかウルトラマンと仮面ライダーだ。



1978年生まれの僕の世代は幼少期にウルトラマンの新作は制作されず、仮面ライダーも平成シリーズ前夜のBLACKとRXのみ(そのためBLACKは超好き!)。だが、それらに馴染がないかといえばそんなこともなく、両キャラクターの猛烈なブーム後であるが故にテレビでは常にオリジンや初期シリーズの再放送が流れ、保育園に行けば絵本やおもちゃが揃い、デパートに行けばSDキャラクター等の関連商品が溢れている、という環境で育った。

番組自体も大人になってから配信で観た「後追い」ではなく、実際に子供の頃に再放送を観ていたので、ウルトラマンでいえばタロウやレオ、仮面ライダーであればストロンガー、アマゾンぐらいまではどちらかというと「リアルタイム」の感覚がある。


そんな昭和特撮の45cmとか50cmのソフビを実際に購入して手に取ると、なんともいえないリアルな雰囲気があり、めちゃめちゃハマってしまった。少しくたびれた塩化ビニールの質感が当時のコスチュームの素材を思わせるし、何よりマスクで覆われているので「顔が似ていない」という心配がない。



「これは、おそとで撮りたい!」

手に入れてから数週間、そんな願望を抱えながらタイトな仕事のスケジュールをやりくりし、ずっと横目で眺めていたフィギュアをついに昨日、撮影のために屋外に持ち出した。



屋外、といっても公園などに一人で行って地面に横ばいになったりしながら撮影をする勇気はないので、スタジオのはいっているビルの屋上にフィギュアと高ズームのレンズを備えたカメラを持って上がることにした。ここなら気兼ねなくいろいろ撮れる。

フィギュアを等身大にみせたい。ウルトラマンなら、とにかく巨大にみせたい。そのためにはズームレンズが必須だ。フィギュアを立て、カラスに連れ去られないかとびくびくしながらできるだけ離れる。5メートル、10メートル。接写特有の歪みがなくなり、距離が空気感となって写真に収まる。どんな大きさでも並行に影が出る太陽の光がスケール感を喪失させるのに一役買ってくれる。少しでも見上げる構図を探す。空を抜く。手前に遮蔽物をいれる。


た、た、楽しい!

さっきまで手のひらにあった、少し指で弾いたら倒れてしまうようなソフビの人形が現人神(あらひとがみ)の如く巨大な像としてカメラの中に収まっていく。30分ほど写真をとって満足すると、隣のビルのオフィスで働いている人と目が合った。見られていた、という恥ずかしさよりも就業中にノイズになるような風景を提供してしまった申し訳なさが勝った。気がつくと日は落ちかけ、夕暮れになっていた。


まあでも、ほんとに楽しかったな。撮った写真をみてほしくて、それだけのためにこのエントリを書きました。ほんとは写真をみてもらうだけでよかったんだけどそれだけってのもな、と思ったら文章書くのに2時間もかかってしまった。みんなが撮った渾身のフィギュアの写真もよければみせてください。

仮面ライダーもいっぱい買った。そちらはまた次の機会に。