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街のつかいみち / 明日は東京マラソン

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何年か前の話、というか繰り返している話。

夜中にスタジオで作業をしていると、窓の外、交差点のあたりが何やら慌ただしい。慌ただしいというよりも物々しい、といった具合で、パトカーや機動隊っぽい人たちが集まって交差点を封鎖していた。

全然関係ないジオラマ写真(セーラームーンの世界観)


数時間後、空が明るくなりかけた頃に作業を終えて徒歩で家に帰ろうとすると(スタジオと自宅は駅いっこ分ぐらい)、信号を渡らせてもらえず、その場にいた警察官の案内で公共機関の地下構内へ誘導された。

「もうこんな時期か~。1年ほんとに早いな~。」

などと思いながら大人しく始発前の地下鉄へ続く階段を降りる。徹夜で1分でも早く帰りたい身には堪えるけど仕方ない。今日は東京マラソンだ。このあと仮眠とって車で出る際にはもっと大きな不便を強いられる。

東京マラソンは都民ランナーを中心に都心部公道での大規模な市民マラソン大会への要望が高まり2007年から始まった大会だそうだ。都庁をスタートして水道橋側から皇居をまわり、秋葉原から浅草や銀座、深川、そのあと品川手前までおりて丸の内でフィニッシュ、というなんというか、東京という割にはちょっと偏ってて、自分の生活圏内だけがすっぽり覆われたような妙に親近感のあるコース。

とはいえマラソン自体に愛着があるわけじゃないので、やっぱりちょっと不便だな、が勝つ。

だけどマラソンランナーからしたらどうだろう。都内の公道のど真ん中を堂々と、しかも同じマラソン好きが集まって一緒に走れる。中には世界的なランナーもいる。めちゃめちゃ楽しそうだ。自分が「ちょっとの不便」を許容して「風物詩」ぐらいのものに置き換えるだけで誰かがこんなに楽しいのならこんなに素晴らしいことはない。「同じように映画のロケや音楽イベントにも公道を使えるようになったらいい」みたいなことを昔書いたけど、その気持ちは変わらない。

もっと言えば自分の仕事や趣味に直接関わらないジャンルでもどんどん公道使ってほしい。F-1も早く実現してほしいし、競馬...は馬の脚に悪そうだからダメか。あ!競輪は?競輪は楽しいんじゃない?とか。そもそもレースじゃなくてもいい。渋谷のスクランブル交差点でバスケの試合するとか、秋葉原の総武線の高架にスクリーンぶらさげてアニメを上映する映画祭とか。

なんかこうして書いてると街興しとか観光資源とかクールジャパンとかの話にすり替わってしまいそうだけど、そういうこととも違って、ただただパブリックなスペースをもっといろんなことに使ってほしいし、「自分の好きなことを道のど真ん中に集まってみんなでやる」みたいなことが増えるといいなと思う。お客さんを集めるのもいいけど、まずそこに住んでる誰かが楽しいのが大事だし、誰かの楽しいを見守るかわりに自分も何かを許される。そういう社会がいいです。なので税金については児童福祉やら社会保障なども当然大切にしつつ、そういうことの整備にもじゃんじゃん使ってほしい。

明日は東京マラソンです。晴れるといいね。