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生活と映画 cut.6 / 一足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2022 10~6位編

生活と映画
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「生活と映画」はURBAN RESEARCHのメディアサイトでかつて僕が連載していた映画コラムです。サイト終了にともない許可をいただいてバックナンバーを公式サイトに移行しました。続きを書こう書こうと思っていたのだけど、日々に忙殺されるうち気がつけば2023年。せっかくなので映画ランキングという形で2022年に観た作品の中で特に面白いと思った10本をご紹介します。

以前は「ランキングといいつつ順位はつけません」形式でしたが、むりやり順番をつけるのも含めて楽しむものかな、と思い一応10位~1位でつけてみました。Filmarksに鑑賞後のテンションで高得点をつけた中から振り返ってもなお色褪せない、と感じた作品を絞るような形で選んでます。なお、あらすじの一部を愛用しているFilmarksさんから引用、要約させていただきました。気になった方はリンク先で観た当時の感想や他の方のレビューも読んでみてください。今回は前編として10位から6位を発表します。

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第10位「カーター」

カーター
https://filmarks.com/movies/101704

あらすじ
失われた一切の記憶。耳に取り付けられた装置から聞こえる謎の声。自分が何者かもわからないまま動き始めた男はやがて、危険極まりない人質救出任務に乗り出すことになる。

「ワンカット」や「シームレスな編集」などといった小手先の演出を軽く飛び越え、全てのアクションとストーリーを無理やり1つのタイムラインに並べたらこうなっちゃいました、という発明のような映画。おそらく通常のカメラに加えドローンやスマホ、GoPro、Insta360あたりを駆使して撮影したフッテージをノンリニアでグリグリ繋いでるんだと思うけど、その強引な編集の中に映画の嘘と真実がパンパンに詰まってて大変魅力的だった。途中からスムーズに繋ぐことすら完全に諦めてるカットがいくつもあって笑ってしまう。フレームレートとスピード感の相性のせいか、全編カクカクした動きになっているのも鬼気迫る雰囲気に一役買ってっていい感じ。

90分くらいにしとけばいいのに、この手法と内容で134分。マジで狂ってる!思いついても作っちゃダメだろ!というか、Netflixオリジナルだからこそできたというか、池袋グランドシネマサンシャインのIMAXでみたらおそらく半分の観客は三半規管をやられて退場してしまうと思う。そういう意味でも新しい時代の作品。50インチ以上のテレビで観るのはあまりオススメしません。

第9位「マイ・ブロークン・マリコ」

マイ・ブロークン・マリコ
https://filmarks.com/movies/101136

あらすじ
鬱屈した日々を送るOL・シイノトモヨは、テレビのニュースで親友・イカガワマリコが亡くなったことを知る。学生時代から父親に虐待を受けていたマリコのために何かできることはないか考えたシイノは、マリコの魂を救うために、その遺骨を奪うことを決⼼する。

序盤の遺骨奪還のシーンで心を掴まれ、そのままの勢いでシイノの旅に最後まで付き合ってしまった。自分の人生から突然いなくなってしまった人の記憶や思い出が勝手に「良かったこと」だけに塗りつぶされることに抵抗する姿勢に共感したし、そこを切り取った原作漫画が何よりすごい。20代の頃に同じような人間関係に悩んでいたことがあって、苛立ちながらも断ち切れないし、「共依存」なんて言葉は知らないし、自分もまだ何物でもないし、なんだよ!なんて思っていたらその相手が突然いなくなってしまい、すごく後悔した。その時の苦い記憶が蘇る一本でした。地獄の花園に続き永野芽郁さんのハイテンションな演技がとても素晴らしいロードムービー。

第8位「トップガン マーヴェリック」

https://filmarks.com/movies/75103

あらすじ
アメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”。しかし彼らエースパイロット達をもってしても絶対不可能な任務に直面していた。任務成功のため、最後の切り札として白羽の矢を立てられたのは、伝説のパイロット“マーヴェリック”(トム・クルーズ)だった。

前作「トップガン」は実際の戦争とはほぼ無縁の、戦闘機という乗り物を題材としたスポ根ドラマという認識だったので、今回の続編もうまく政治状況をぼかしながら師弟の成長物語にフォーカスを合わせてるのがうまいな~と思った。敵国もどちらかというとインターハイのライバル校みたいな存在で、中東なのか中国なのかロシアなのか、本当にどの国にも当てはまらないように描かれている。まるで少年漫画の悪の組織みたいな感じなんだけど、それがこの映画に娯楽作品としての軽さを与えているのは間違いないと思う。

戦闘、飛行シーンの全てが激しいカット割なのにも関わらず、「そこで何が行われてるか」「どうすれば成功か」が初見で完全に理解できる画面整理力が素晴らしい。モータースポーツの主人公がそのヤンチャ性を残したまま教室にかえってくる、という構成はまさに「GTO」なので、マーヴェリック=鬼塚説が成り立つのでは?などと観終わったあとに考えたりしました。

第7位「ナイトメアアリー」

ナイトメアアリー
https://filmarks.com/movies/88811

あらすじ
ショービジネスでの成功を夢みる主人公スタンは、怪しげなカーニバルの一座と出会う。そこで読心術や奇術を学んだ彼は、そのカリスマ性を武器に興行師として成功していくが..。

前半のサーカスや見世物小屋のバックステージの描写がとにかく楽しく、この旅をずっと観れるだけでもいいなあと思わせてくれた。中盤以降のカーニバル独立後の展開は「慢心からの転落」を想像させるような嫌~な雰囲気が常に充満していて、そこも大変好みでした。

ギレルモ・デル・トロがSF要素や超常現象的な要素をできるだけ排除した上で、怪しげかつリアリスティックな世界観を描くとこうなるのか~という発見があった。僕はコールドリーディングや催眠術、奇術、手品の類を題材にした映画が好きなのだけど、それらの技術が「仕掛ける側」のメンタルに及ぼす影響を描いている作品は実はあまり少なくて、そういう意味でも貴重な一本だと思う。相手に対する支配感や全能感は完全なまやかしであるということに自覚的か無自覚か、はとても重要で、そこで運命がかならず分かれる。現実でもそれが悪い方に作用してしまってる著名人っているよね、みたいな。

世界観が好きすぎてリメイクの元となった「悪魔の往く町」のソフトまで購入してしまったこともあり、7位にランクインです。

第6位「神は見返りを求める」

神は見返りを求める
https://filmarks.com/movies/101912

あらすじ
イベント会社に勤める⽥⺟神は、合コンでYouTuber・ゆりちゃんに出会う。⽥⺟神は、再⽣回数に悩む彼⼥を不憫に思い、まるで「神」かの様に⾒返りを求めず、ゆりちゃんの YouTubeチャンネルを⼿伝うようになる。ふたりはお互い良きパートナーになっていくが、あることをきっかけに⼆⼈の関係が豹変する。

無名時代から始まり、徐々に知名度が上がるにつれ変わっていく二人の関係そのものが何度もみてきた人間模様に重なって全然笑えない。YouTuberをテーマとした邦画でありながら鑑賞後にマーティン・スコセッシの半生を描くタイプの作品を観たような感覚になる不思議な作品で、周囲では「JOKERっぽい」という感想も多かったです。ラストは唖然。岸井ゆきのさんにこういう憎まれ役をやるイメージがなかったので新鮮でした。

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以上「一足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2022 10~6位編」でした。ベスト5はまた明日!