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生活と映画 cut.7 / 一足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2022 5~1位編

生活と映画
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「生活と映画」はURBAN RESEARCHのメディアサイトでかつて僕が連載していた映画コラムです。サイト終了にともない許可をいただいてバックナンバーを自分のサイトに移行しました。せっかくなので数年ぶりに映画ランキングという形で2022年に観た映画の中で特に面白いと思った作品10本をご紹介します。

Filmarksに鑑賞後のテンションで高得点をつけたものの中から振り返ってもなお色褪せない、と感じるものを絞るような形で選んでます。なお、あらすじも一部Filmarksさんから引用、要約させていただきました。気になった方はリンク先で観た当時の感想や他の方のレビューも読んでみてください。今回は5位から年間ベストとなる1位までを発表します。前編はこちら。

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第5位「アテナ」

アテナ
https://filmarks.com/movies/104649

あらすじ
ひとりの少年が不可解な状況で悲劇的な死を遂げてから数時間後。一番下の弟を失った3兄弟の人生は、想像もしなかった混乱の渦にのみ込まれていく。

極右政党の台頭などもあり社会情勢が混乱しているフランスの「アテナ団地」を舞台に繰り広げられる警察と市民との戦いを描いた作品。鑑賞した時点で十分高評価できる作品だったが、本編鑑賞後にYouTubeでメイキング観て度肝を抜かれ、さらに評価を上げた1本。先入観でCGや疑似ワンカットだと勝手に思っていたシーンや、炎、爆発のほぼすべてがリアル。ゆえにそれらを目の前にした俳優やエキストラの緊迫感も全部リアルというすごい作品で、まるで往年の黒澤映画を観てる気分だった。Netflix入ってる人には是非観てほしいです。「権力と暴力」について考える機会になります。

第4位「RRR」

RRR
https://filmarks.com/movies/100400

あらすじ
1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビームと大義のため英国政府の警察となるラーマ。熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。

ほかの皆さんがいうような「3時間あっという間」みたいな感覚は正直なくて、2人それぞれが主人公の濃密な映画をまとめて2本分観たような心地よい疲労感を感じた。当然ながら笑いあり涙ありアクションありの超・娯楽大作なはずなんだけど、ラストまで観てそのエンディングのビターさに「インドのムードは今こんな感じなのか」と軽く絶句。愛する人を守るために武器を持つべきか、それとも持たざるべきか、現実と地続きの問いかけになっている気がしました。ジャンプ漫画の大コマ見開きを3時間めくり続けるような貴重な映像体験を味わうためにも映画館で観ることを強くお薦めします。

第3位「コーダあいのうた」

コーダあいのうた
https://filmarks.com/movies/96257

あらすじ
家族の中でたった⼀⼈“聴者”である少⼥・ルビーは、「歌うこと」を夢みた。そして、彼⼥が振り絞った⼀歩踏み出す勇気が、愉快で厄介な家族も、抱えた問題もすべてを⼒に変えていくー。

「素敵な両親」と思う人もいれば「呪い」扱いする人もいるであろう絶妙なバランスで描かれた家族模様が本当にうまいなと思った。鑑賞後に主人公と同じく聴覚障害のある両親を持つ聴者の方の感想をYouTubeでいろいろと観たり聴いたりしたのも込みで印象深い作品。「劇中で音楽を演奏する」作品は数あれど、本作の発表会のシーンは特に必見。映画館で観れてよかった。

原田知世さん版の「Both Sides Now」を中学生時代に聴きまくっていたので劇中この曲が流れると自然に涙腺が緩んでしまい、自分が何に感動しているのかよくわかなくなってしまう。でも好き。V先生は同賞ノミネートの安西先生を押さえ、2022年の「ベストティーチャー賞」です。

第2位「THE FIRST SLAM DUNK」

THE FIRST SLAM DUNK
https://filmarks.com/movies/98596

あらすじ(概要)
超人気バスケ漫画のアニメ化。TV版では描かれなかった「その後」を初映像化。

山王戦をこだわり抜いた動きと密度で映像化した超・商業規模のアート映画。僕自身原作に対する思い入れが相当強く、そういう人たちが評価していると作品だと思うのでバックボーンをまったく知らない人が観てどう思うのかは予測できず、逆にお聞きしたいくらい。

今年は「ONE PIECE FILM RED」も素晴らしかったし、週刊連載で特大ヒット作を生み出す漫画家の先生には作品のフォーマットやメディアを超えて「人の心を動かすために大事な何か」を常に見据えて創作活動をしているんだと思う。

原作にはないゴリの心が折れかけるシーン。小中とバスケをやる中で本連載が開始、大ブームとなったせいか膨れ上がる部員にまったくレギュラーが穫れず、その上いじめのターゲットにまでなってしまい退部したしょっぱい思い出が蘇った。それでも最終巻まで発売日に買い続けた思い出の作品。

試合展開もセリフもすべて頭に入っているはずなのに「入れ、、、!!!!」と涙目で祈ってしまった。それが全て。安西先生は怪我をした花道を再出場させてしまったので惜しくも「ベストティーチャー賞」受賞ならず。来年に期待です。

第1位「ブラック・フォン」

ブラック・フォン
https://filmarks.com/movies/99834

あらすじ
子供の連続失踪事件が起きているコロラド州のとある町。気弱な少年フィニー(メイソン・テムズ)は学校の帰り道にマジシャンだという黒風船を持った男(イーサン・ホーク)に黒いバンに押し込まれ、誘拐されてしまう。気が付くとそこは不気味な地下室だった。

「RRR」「コーダ」ときて「SLAM DUNK」と無個性かと思われた当ランキングですが、栄えある大賞はブラムハウス・プロダクションズ制作「ブラックフォン」が堂々の受賞!僕のここ数年のベスト映画は「透明人間」「OLD」「マリグナント」など常にホラー映画が占めており、今年もその流れに。「ゲット・アウト」以降ホラー映画はジャンルのマッシュアップ傾向が強まっているように思え、それが個人的な好みにものすごくフィットしています。「透明人間」はモンスターホラーでありながらSF、サスペンス要素が色濃く、シャマラン「OLD」では島の「ある仕掛け」によってファミリードラマ、あるいは家族愛そのものが描き出される。本能的な娯楽としてのホラーを入口、手段として普遍的な物語を描く作品に弱い、ということを年々自覚しています。

本作もホラーを題材にしながら「スタンド・バイ・ミー」「ベスト・キッド」などのジュブナイル物、成長譚として熱い仕上がりになっていて、ホラーを観ていたはずが心のなかで主人公を応援し、気がつけば涙しているという超・名作。映画全体を覆う「これはどっちの世界?どっちのパターン?」みたいな怪しさも相まって終盤のドライブ感が素晴らしかった。文句なし、とは言わないけど、一人ぐらい推す人間がいいのでは?と思わせる1本でした。

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以上、「一足おそい!RAM RIDERの映画ランキング 2022」でした。今年もたくさんの面白い映画に出会えますように。